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東京高等裁判所 昭和42年(行コ)11号 判決 1968年5月21日

控訴人 株式会社島田製作所

被控訴人 東京国税局長

訴訟代理人 横山茂晴 外五名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事  実 <省略>

理由

当裁判所の判断は、つぎの点を訂正補充するほか原判決理由記載と同一であるからこれを引用する。

一、原判決二〇枚目(記録八二丁)表七行目の「千葉県」以下裏一行目の「こと」までを削除し、同二六枚目(記録八八丁)裏八行目に「本件課税の対象となつた別表二の」とあるのを、「昭和三三年一〇月から昭和三五年七月までの間小熊は別表二に掲げる数量のゴルフクラブ(ウツド)をその製造場から控訴人の新宿営業所に移出したが、右」と訂正する。

二、<証拠省略>

三、控訴人は、物品税法がみなす製造業者を納税義務者とする立法趣旨からすれば、原料供給による製造委託の関係があるかどうかは、個々の取引についてこれを考えるべきでなく、販売業者と製造者との取引関係を一体として考察し、販売業者中心の製造販売が行われているかどうかにより決定すべきものと主張する。なるほど、旧物品税法第六条(昭和三四年法律第一五〇号による改正前はその第四項、尚改正後はその第三項前段)が、第二種物品の販売業者が原料を供給して右物品の製造を委託する場合は、その販売業者を受託者の製造した物品の製造者とみなす旨定めた趣旨は、一般的にいつて、第二種物品の販売業者が原料を供給して第二種物品の製造を委託している場合、受託者には零細企業者が非常に多く、委託者が受託者に対して製品の規格ないし意匠をすべて指示して作らせ、その製品の処分も受託者は自由にすることができず、またその取引価格も結局委託者の指示どおりになり、経済的には委託者が受託者を支配している関係にある実情にかんがみ、零細企業の保護と税負担の適正化を計るためその物品税を委託者に負担せしめるにあるとおもわれる。しかし、これを税務行政の上で具体的に実現する段階においてはすべての案件を劃一的な標準によつて処理することにより税負担の公平と徴税事務の敏速化をはかるためその要件を定型化し、(イ)、第二種物品の販売業者が、(ロ)、その原料を供給して製造を委託した場合、その販売業者を受託者の製造した物品の製造業者とみなしてその物品税を負担せしめることとしたのである。故に、右の二要件を満たす以上その他の企業従属等の点について調査判断するまでもなくみなす製造業者とされるのであり、その意味で物品税法上のみなす製造業者であるかどうかは、販売業者と製造者との間の取引を一体として考察し企業従属の関係が存在するかどうかによつてではなく、(イ)、第二種物品の販売業者が、(ロ)、その原料を供給して製造を委託するという事実により、受託者がその原料によつて製造した物品について個々に決定すべきものといわなければならない。勿論その際製造業者が供給する原料も、その原料によつて受託者が製造した物品も、ともに多数に上るのが通例であろうが、極端な場合を考えればその原料も一個分、製品も一個であつても右規定によつてその間にみなす製造業者の関係が成立する場合があることになる理である。しかし本件の場合は原審認定のとおり、ゴルフクラブの製造業者である控訴人が訴外小熊三五郎に対してその原料であるシヤフトなどを一ケ月数十個供給し、小熊はこれによつて製造したゴルフクラブを一ヶ月数十個控訴人に移出したのであるから、その間にみなす製造業者の関係が成立することは明白であり、控訴人のこの点に関する主張は理由がない。

よつて控訴人の本件控訴を理由のないものとして棄却し、控訴費用の負担について民事訴訟法第九五条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 長谷部茂吉 鈴木信次郎 岡田辰雄)

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